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Vol.0010■ネコでも脱兎 2004年11月2日
「いたいた〜♪ ピッピ、出ておいで。おこらないから、こっちへおいで」とアイツがよく伸びる手をこちらに伸ばしてきた。黒い箱の後で、おいらは後ずさりした。これ以上小さくなれないほど小さくなった。絶対にムリとわかっていても、黒くて長い紐の影にさえ隠れたいくらいだった。それでもアイツは身を乗り出して、ひつこく迫ってきた。

おいらは覚悟を決めた。「アニキのように洗われるくらいなら!」と、伸びてくる手の反対側から脱兎のごとく逃げ出した。さっきヘンなおっぱいがこぼれた場所。数時間しかいないこの場所では、おいらが一番わかる場所へと走った。そこで適当に隠れられそうなすき間に滑り込んだ。すぐに、「キッチンに逃げてったわ!」と言いながらアイツが追いかけてきた。そしてバチンと電気をつけ、部屋を明るくした。

「どこに入り込んだんだろう?」と言いながら、連れ合いとガサガサやっている。おいらはさっきアニキを洗っていた恐ろしい場所の下、少し空いたドアの中にいた。物がごちゃごちゃ置いてあるところだった。すき間はほんの少ししかなかったけれど飛び込んだ勢いで、うまく中に入れた。ドアは再び閉まりかけ、間から電気の明かりが筋のように延びてくる。二本足がその前を通り過ぎるたびに、筋が消えたり戻ったりする。

「ピッピー、ピッピー。ねぇ、チャッチャ、ピッピどこか知らない?」とアイツはアニキにまで声をかけている。アニキは恐怖と空腹で震えてることだろう。おいらもそうだった。その時、「まさか、キャビネットの中じゃないよね?」というアイツの声がして、いきなりドアが開き、目を開けてられないくらいの光が差し込んできた。まずい!

だけど物影になって見つからなかった。「いないなぁ。そうだよね、こんなドア開けられたら"What's Michael?"だもんね〜」と訳のわからないことを言っている。「まっ、ここならトイレもエサも近いし、放っておいてもいいんじゃないか」という連れ合いの一言で、パチンと電気が消え、二本足は出て行った。そして家中がシーンと静かになった。(つづく)
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