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Vol.0027■10ヶ月 2004年12月31日
きょうで2004年が終わるらしい。アイツがそう言ってた。おいらは生きてる。しかも元気だ。悪性リンパ腫というガンになってるのがわかってから、10ヶ月経った。治ったのかどうかは誰にもわからない。とにかく、大変だった今年が終わる。アイツはおいらの先生だった香港のドリスに手紙を書いた。

「Dear Doris ピッピとチャッチャはとっても元気です。最近ちょっと声が出なくなりましたが(でも今では完全に戻りました)。ニュージーランドの緑と自然が彼らを癒しているのでしょう。もちろん、それ以前にあなたが救ってくれたからこそ、彼らはここまでたどり着き、私たちと再び一緒に暮らせるようになったのです。このご恩に一生感謝します。そしていつまでも忘れずにいます。」・・・だとさ。

確かにドリスに会わなかったら、どうなってたかわかんない。ただ、あの時のことは妙な薬を飲まされてからというもの、ほとんど覚えてない。時々、あいつやドリスが目の前でおいらをのぞき込んでるのに気づいたけど、あとは何をしてたのかよくわかんない。ただただ苦しかった。からだの中に燃えるように熱いものがあって、吐いても吐いても出てかなかったんだ。

ドリスから返事が来た。「ピッピとチャッチャ、そしてみんな元気そうで何より。2匹のことはとっても懐かしくて、看護婦たちからも盛んに近況を聞かれてるの。声はどうしたの? 風邪か何かかしら? 早くよくなるといいわね。それとも今までの診断記録を送ったほうがいい? 必要なものがあったらいつでも言ってね。2匹のためなら、できる限りのことはするわ。幸せで健康な2005年でありますように。また近いうちに。」

優しかったドリス。苦しい中でも細くて白い指がおいらのからだを触ったり抱いたりしてたのは、なんとなく覚えてる。すぐ近くにあるものは、少しは見えてたんだ。あと、黒くて長い髪の毛も。あの細い指先を見ると妙に安心した。アイツら以外で、おいらが初めて心を委ねた二本足。ニュージーランドに来る前、アイツらが先に行っちまった後も、おいらたちはドリスのところにいた。心細かったけど寂しくはなかった。それも今ではずっと前。おいらたちは本当に遠いところまで来ちまったんだ。そう思いながら2004年が終わる。おいらは生きる。2005年を生きる。(つづく)

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