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Vol.0042■元の鞘 2005年2月22日
あいらの不機嫌はずっと続いた。ほんとうのことを言うと、まだ続いてる。でも、アニキがそばに寄ってくるだけで、腹が立って腹が立って仕方なかったのは、だいぶ収まった。けっきょく、「フゥゥゥ〜」と威嚇し、「ウゥゥゥ〜」と唸っていた日が3日間続いた。怒ったおいらをアニキから引き離しながら、「3日間離れ離れだったんだから、3日間は仕方ないのかな?」と言ってた、アイツの言葉通りになった。

アニキのにおいが嫌だった。他の四つ足のにおい、薬のにおい、とにかく嫌で嫌で仕方ない獣医のにおい。それからアニキがおいら専用だった「王様の椅子」で昼寝をして、そのにおいを残していくのも気に入らない。弱々しそうなのもしゃくに障る。普段おいらたちは仲がいい。でも、いったん相手が自分より弱いとなると、急に目障りになって倒したくなってくるんだ。特においらだけでのんびり過ごしていた後だと、余計そうしたくなる。

アイツはさんざん文句を言ってたけど、いいこともあった。おいらとアニキがケンカするのを心配して、おいらをまたアイツらのベッドで寝かせてくれるようになったんだ。こうなれば、もう「王様の椅子」に用はない。夜になるとアニキは廊下で、おいらはアイツらと部屋で、別々に寝るってわけさ。

アニキはおいらのケンカをまったく買わなかった。ご飯を食べていても、水を飲んでいても、おいらが横から「ハァァァ〜」とやると、黙ってその場を離れた。いつもだったらこうじゃない。体重に物を言われて、やり返してくる。きっと弱くなってて、「相手をしない方がいい」ってわかってたのかもしれない。(←まあ、こんな感じに・・・)

でも、アニキは怒ってるわけでも、おどおどしてるわけでもない。歩いてる時に行く手においらが寝そべってると、邪魔な石でもよけるようにグルッと大回りをして、そのままスタスタ行っちまう。そんなことが続いちゃ、おいらも手応えがない。だんだん脅かすことに飽きてきた。けっきょく、アニキの方が一枚上手だったのかもしれない。(つづく)

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