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Vol.0057■おいらが話せる訳−薬 2005年4月15日
「これ以上飲んだら、からだも死ぬな」と、おいらは思った。獣医のドリスとアイツはおいらにもっと薬を飲ませるかどうか話してた。ガンの薬を飲んで、おいらのからだは中から溶けた。燃えるように熱かった。そしてガンが消えた。でもガンが消えてからの方が辛かった。首にできたガンは邪魔だったけど、痛くはなかったからな。だんだん息がしにくくなってただけだ。

             (→ガンよりも薬との戦いの方が苦しかったぜ)

どうやら2人が話してた薬は、前のとは違うらしい。けど、おいらにとっちゃ同じことだ。どれも訳がわからない、おいらたち四つ足が、自分から口にするもんじゃ絶対にない。誰かに頭を抑えられ、顔を上に向けられ、下あごに指をかけて口を開けさせられ、無理やり放り込まれるもんだ。

もしかしたら、それで良くなるのかもしれないけど、四つ足にはそこまでする気はない。知らないうちに生まれてきたように、知らないうちに死んでくもんなんだ。からだが溶ける苦しみをもう一度やり直すなら、「おいらは死ぬ」と思った。今度こそからだも死んで、もうここには戻ってこないと思った。

おいらは迷った。どうするか。死んでもいいけど、薬を飲まないで生きられるんだったらそれもいい。今のままなら、からだまで死ぬことはないだろう。アイツがせっせと水やご飯を流し込んでるせいか、気持ちが空っぽでもからだは生きてたし、動いてた。それがなくなったら気持ちが帰れる場所がなくなるから、本当に終わるんだ。

「薬を飲んだら・・・」 一生懸命交信しようとしたけど、アイツはおいらをなでてるだけで見てなかった。ずっと高い上の方にある顔はドリスの方を向いてた。そもそも交信できるかどうかもわからない。アイツはからだを置いて気持ちだけで帰ったおいらに気づいていながら、「まさかね」と信じなかったじゃないか! そんなヤツとどうやって頭で話すんだ? そうだ! 二本足は話すんだ! 話すんだからこっちも話せばいい。おいらは一つの方法を試してみることにした。(つづく)
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