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Vol.0061■おいらが話せる訳−対話 2005年4月29日
とうとうアイツは下を向き、おいらを見た。おいらたちは目が合った。今だ! 耳か目でしか言葉が受け取れないアイツらに、音も字も使わないで話す。それには交信するしかない。でも、いつものように思い浮かべるだけじゃ、通じっこない。だから、おいらは言葉を交信した。12年一緒に住んでて覚えた、二本足の言葉・・・「YA・ME・TE」

アイツの目の色が変わり、おいらをなでてた指先に力が入った。「通じた!」 アイツはビックリしていた。通じた証拠だ。おいらにもアイツが思ってることがわかった。「ピッピと話せた!ピッピと話せた!ピッピと話せた!・・・・」頭の中で同じことがグルグル回ってた。アイツは顔を上げ、ドリスの方に向き直ると、はっきりと言った。

「水も飲まなければ、食べ物の匂いさえかがず、食欲のかけらさえ感じられないのにゾウシンザイをあげても結果は同じでしょう? ピッピは薬で十分苦しんだわ。もうこれ以上苦しめることはできない。」 よし! ゾウシンザイが薬だろう。名前なんかどうでもいい。とにかく飲んだらおしまいだ。今度こそ、おいらはもたないだろう。
薬が好きなドリスも、あきらめたみたいだった。2 人とも「これでダメだったら・・・」と同じことを頭の中で考えてた。おいらにはわかった。おいらは薬を飲んだら死ぬと思ってたので、アイツらの心配はどうでもよかった。飲まないですむなら、それでいい。2人は何やらしんみり話してた。おいらは寒くて早く家に帰りたかった。そんなに心配すんなって。薬より怖いものはないんだ。

おいらをバッグに入れると、アイツはみんなに「バイバイ」と言っていた。ドリスも優しかった看護婦たちもみんな外まで出てきて、「バイバイ」と言った。薬を飲まないとなると、もうドリスに会うこともないらしい。おいらはほっとした。もうこのバッグに入れられ、ゆらゆら揺れながら気持ち悪い思いしてここまで来ることもないんだ。やった! あの時おいらに必要だったのは、暗くて温かくて静かなところで、安心して眠ることだったんだ。(つづく)

                      (→これが一番だったんだ)
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