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Vol.00088■冬の思い出−アニキの絶食 2005年8月2日
「もしかして?」と思っていたおいらの心配は、ほんとうになった。アイツらが来た次の日の朝、いつものように検疫所の誰かがおいらたちのご飯や水を取り替えに来た。アニキにだけは注射もするし、おしっこの検査もする。糖尿病を調べてんだろう。でもその日はいつもと違った。誰かはすぐに別の誰かを呼んできた。2人で何か話してる。     (どうしてんのかな?アニキ→)

アニキは弱ってた。もう交信らしい交信はできなかった。多分、食べてないんだろう。寒さとたくさんの四つ足のにおいと鳴き声で、まいっちまったんだ。ちょっと前までガンで生きるか死ぬかだったおいらの方が元気だった。ガリガリだけど食欲はあった。香港を出る前に預けられてた獣医のドリスのところで、しっかり喰ってきたのもよかったんだろう。

アニキも喰ってたけど、おいらほどじゃなかった。アニキは丸顔だからなかなか痩せて見えないけど、かなり痩せてるはずだ。「なにせ交信できないんだからな・・・」と思っていると、また誰か来た。3人めの背が高いのは多分、獣医だ。ドリスと同じヘンな機械を持ってて、おいらたちのからだに当てたり他のヤツらがしないことをする。それよりなにより、薬のにおいがするんだ。大嫌いな病院のにおい。

3人でゴソゴソ話してる。誰かがもっと皿を持ってきた。やっぱりアニキが喰わないのが問題なんだ。でも喰わそうとするとアニキはますます喰わなくなるんだぜ。押し付けられるともっと頑固になっちまう。カチャカチャ皿の音がして、いつもよりたくさんの食べ物のにおいがこっちまで押し寄せてくる。 でも、いいにおいだとは思わなかった。

朝だから少しは喰えるけど、それ以上は喰えない。やっぱり、ここは寒すぎる。壁の高いところの窓なんか開けっ放しだ。おいらたちのにおいがたまるのが嫌なんだろう。でも、夜になったらどんなに寒いか。昼間も陽なんか届かない。電気で明るいだけだ。ここを出たいよ。アイツらはいつ来るんだ?(つづく)
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