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Vol.00091■冬の思い出−イワシ 2005年8月12日
「チャッチャー!大丈夫?」 
ウトウトしてたらアイツの声で目が覚めた。寒いから寝てばっかりだ。
「心配してたのよ。きのう電話もらったんだけど、食べてないんだって? きゃ〜、こんなに痩せてる。どうしよう? 背骨がつかめるじゃない!」
アイツは泣きそうな声を出しながら、必死で袋をガサガサやってる。連れ合いがアニキを抱いてんだろう。おいらのケージからは音しか聞こえない。

少しアニキが反応した。弱々しいけど交信があった。でも、弱すぎてよくわかんない。
「チャッチャ、なんでもいいから食べて。あんまり好きじゃなくても、なにか口に入れて。お願い。元気になっておうちに帰ってきて。みんな待ってるよ。」
アイツはガサガサやりながら話し続けてる。

日本のキャットフード、削り節、ニュージーランドの缶詰、煮干、またたび・・・いろんなにおいがしてきた。いつも皿に出てるのよりは、アニキが好きそうなもんだ。その時、ふっとかいだことがないにおいがした。魚だ。なんだかわかんないけど、うまそうなにおい。

「イワシよ、チャッチャ。パパが見つけてきてくれたの。焼いてきたからこれなら食べられるでしょう?」
  イワシ? 
「お願い。食べて元気になって。このままずっと食べなかったら・・・」
アイツの声はもっと泣きそうになった。ほんとうにこのまま喰わなかったら・・・。 連れ合いが急いでケージを出て行った。皿を探しに行ったんだ。アイツだけが残った。

「食べて。お願い。」 
アニキはきっと、ズラっと並んだ食べ物の前の電気毛布に座らされてんだろう。
「食べたほうがいいよ。食べるんだ。」 
おいらは珍しくアニキにメッセージを送った。四つ足は普通こういうことをしない。でも、あの時は特別だった。 (つづく)  (食べるんだ、アニキ→)

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