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Vol.00093■冬の思い出−家の味 2005年8月19日
「食べたほうがいいよ。食べるんだ。」 
おいらはアニキにメッセージを送った。四つ足はこういうことをしないもんだけど、あの時だけはおいらも自分の思ってることを伝えた。でも、アニキに届いたかどうかはわかんない。アニキはもう、受け取るちからもなかったかもしれない。

「チャッチャー!」
急にアイツが素っ頓狂な声をあげた。おいらの所からはなにが起きたかは見えない。急いで皿を持ってきた連れ合いが聞いてる。
「どうした?」
「チャッチャが食べたの!イワシを食べたの!手に載せて口のところまで持ってったら、ほら!」
と、アイツが興奮しながら言ってる。

アニキが喰った!とうとう喰ったのか。ホッとしてちょっと上げていた頭をベッドの中に戻し、できるだけ電気毛布に触れるよう置いた。喰い始めりゃ、後はなんとかなるだろう。

「お皿も口まで持ってた方がいいんじゃない?こうやって。」
「ほんとだ、喰ってる。」
「すごーい。半身近く食べたじゃない。お腹空いてたのよ、やっぱり。」
「いいぞ、チャッチャ、もっと食べるんだ。」 
アイツらは必死でアニキに喰わせてるみたいだった。こうなると愛想のいいアニキは一生懸命喰うかもしれない。

「よかった」と思いながら、おいらはうつらうつらしかけた。寒いからすぐ眠くなる。その時、突然、
「ピッピもイワシ喰うか?」
と、連れ合いがケージに入ってきた。やっともう1匹いるのを思い出したみたいだ。くれるんだったら寝ないで喰うさ、もちろん。

初めて喰ったイワシは脂っこかったし冷めてたけど、うまかった。家の味がした。ここを出たい。家に帰りたい。そう思って
「ニャー」
と鳴いたら、
「そうか、うまいだろ?もっと食べるか?」
と言って、連れ合いはおいらの頭をなでた。(つづく)

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