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Vol.00096■冬のお休み、春の始まりU 2005年8月30日
ちょうどオブリの家とおいらんちの間の庭で、ギャオギャオギャオギャオギャオギャオギャオギャオギャオギャオっと、やったおいら。家の中のアイツは、見てもないのに、
「ピッピー!やめなさぁぁぁぁい!」
と金切り声。
「どうしておいらだってわかるんだよぉ? まっ、そうなんだけどさ」
と思いながら、おいらは相手の首に噛みついた。

相手もおいらの胸元を猛烈に引っ掻いてきた。イテッ! かなり決まった。プンと血のにおいがしてくる。ところが、おいらの噛みはたいして決まんない。なぜかって? おいらにはもうそんなに歯がないからさ。残ってるたった3本の歯で噛むんだけど、片方は上下で1個しか歯がないから、噛み合わない。相手の動きを抑えるってことにはなるけど、血も出ないし、それほど痛くもないだろう。

「なにやってんのぉ、アンタたちぃ!!!やめなさーい!!!」
一番近いランドリールームのドアから飛び出してきたアイツは、おいらたちを見てビックリ。てっきりおいらがオブリとやり合ってると思ったんだろう。でも、相手はアニキだった。アイツらが濡らした服を吊り下げる場所は、おいらの大事な爪とぎ場でもあるんだ。目の前の垣根の向こうはオブリの家だしな。

         (ここは、ガリガリガリガリ、譲れないぜ!ガリガリガリガリ→)

外に出ると、いつもそこでひとしきりガリガリガリガリ。ところが、アニキまでそこに爪をかけようとしてるじゃないか! これにはおいらも、がまんできなかった。パッと近づくと、アニキはそこを離れる代わりにおいらに向かってきた。うなり合う間もなく、あっという間に取っ組み合いの大ケンカ。すごかったぜ! あんなに毛が抜けたのは初めてかもしれないな。冬だから特に毛が多いしね。

おいらは胸に4本くらい筋が入った。白いから血も目立って、あいつは動転。舐めにくいとこだけど、なんとか舐めて治したぜ。アニキの首筋はアイツがずっとチェックしてたけど、けっきょくなにもしなかったし、アニキも足で掻いたりしてないから、なんでもなかったみたいだ。なっ?おいらの噛みはもう効かないんだ。(つづく)


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