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Vol.00099■冬の思い出−喰うには訳がある 2005年9月9日
「ねぇ、ピッピも痩せてきてない?」 
アイツが言ってることはほんとうだった。その頃は、おいらもあんまり喰ってなかった。アニキのようにがんとして喰わないんじゃなくて、なんとなく喰わなかった。でも他にすることもないから、そのへんに出てる物をときどき口に入れた。それは、後足で耳の後ろを掻くのとおんなじで、してもしなくてもどっちでもいいことだった。腹が減るっていうのを感じなくなってた。

ニュージーランドに来る前、獣医のドリスに預けられてたときは、腹が減って腹が減って仕方なかった。芸でもしてるみたいに、看護婦にゲラゲラ笑われるほど喰った。「なんでこんなに喰うかな〜」と思いながら、あんまり好きじゃないキャットフードまで喰った。

その3ヶ月前まではガンで死ぬか生きるかで、自分で喰うことなんかできなかった。喰えるようになった2ヶ月前でも、量が少なすぎて、あいつは自分で作った妙なものをおいらの口にスポイトで流し込んでた。変われば変わるもんだよな。

大喰いには訳があった。もちろん、ガンがよくなってきて1 ヵ月半喰ってなかった分を取り返してたってこともある。でも、一番の理由は、ドリスのとこが寒かったからなんだ、多分。おいらたちは二本足みたいに服を着ない。寒いときは太ってしのぐ。ドリスのとこには他にも四つ足がいて、いつも冷房がキンキンに効いてた。あの時の香港は最高に暑かったけど、ドリスのとこは香港じゃないみたいに寒かった。

おいらは自動的に喰い始めた。喰っても喰っても喰えるから、どんどん喰った。ガリガリに痩せてたから見た目はあんまり変わんなかったし、体重もびっくりするほどは増えなかったけどね。あそこで喰っといたから、おいらはこっちに来てからもけっこう元気だった。おいらほど喰ってなかったアニキにはこの寒さはてきめんだった。でも、とうとうおいらも寒さにやられちまったようだ。もう喰う気がしないんだ。
(つづく)

(←元々ガリガリだったのに、もっとガリガリに。これじゃアニキと一緒だよ)


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