Vol.0002■やってきた二本足 |
2004年10月5日 |
おいらが生まれたのは、今から12年前のシンガポール。だだっ広い芝生の広
がる、工場の敷地内だった。二本足のマレー人の守衛がいて、ママが身ごもっ
たのを知って、可愛がってくれてたらしい。正確に言えば、おいらたちは警備
室の中で生まれたんだ。
他にもチャッチャと呼ばれてるトラ猫のアニキと、アネキが2匹いた。あんま
り目が見えなかったし、二本足のやつらが入れ替わり立ち替わりやってくるん
で、怖かったな。いつも子ネコらしくミャーミャー鳴いてはママを探してた。
芝はおいらの足より長くて歩くと沈んで、なかなかうまく歩けなかった。20
歩も歩くとすぐにママがわかんなくなって、これまた怖かった。
時々、空まで届くような二本の足がすぐそばにすっくと立ち、クレーンのよう
な手が降ってきたかと思うと、おいらたちを高〜いところまで情け容赦なく持
ち上げ、大きな顔でのぞき込んできたり、デカい手でなでたりする。そんな時
は心臓が止まりそうで、必死で鳴いた。ママはいつも首のうしろを軽く噛んで
持ち上げてくれ、絶対に飛び降りれないような高いところまで持ち上げること
はなかったからな。
とにかくあの頃は1日中鳴いてた。それが4匹だから、周りはかなり賑やかだ
った。でもこれだけうるさけりゃ、ママがおいらたちを見つけられなくなるこ
とも、おっぱいを飲みっぱぐれることもないだろうと、なんだかみんな一生懸
命鳴いてたもんだ。
おいらはきょうだいのうちで、一番チビで痩せっぽち。アニキは一 番大きくて、堂々と立派だったよ。足なんかおいらの倍ぐらい太くて丈夫だっ
たな。だからおっぱいをもらう時もいつも一番いい場所に陣取って、たっぷり
飲んでた。おいらは飲みにくいはじっこの方だったり、3匹の間に入りこめな
くてウロウロしてたり・・・。そんな時はママが首根っこを噛んで、みんなの
真ん中に押し込んでくれたな〜。
優しいママ。静かで広くて、二本足に踏まれないようにさえすれば、けっこう
安全な場所。おいらはずっとあそこにいるもんだとばかり、というか、あそこ
を離れるなんて思ってもみなかった。ところがある日、アイツとその連れ合い
がやってきた。おいらが怖くてしかたない、二本足の連中だ。
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