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Vol.0005■二本足の家 2004年10月15日
おいらとアニキはさらわれた。段ボールに入れて連れ去られた。なにがなんだかわからないうちに箱がひどく揺れ、気持ちが悪くなった。それでもおいらたちは鳴き続けた。どうかしてママが聞きつけて助けにきてくれるのではないかと、必死だった。でも、ムダだった。

箱が揺れなくなった時、おいらたちは見たこともないところに来ていた。芝の代わりにツルツルした木の床。太陽も風もない。やたらに狭く、あちこちから嗅いだこともない妙なにおいがする恐ろしい場所だ。箱から出されるや、「とんでもないところに来ちまった!」とわかったものの、どうしようもない。そこは二本足の家だった。ツルツルの床はちっとも爪がかからず、芝より歩きにくかった。どっちに逃げても、ママはいなかった。

おいらは鳴いた。怖かったし、おなかがすいていた。ママがいなくて、どうやっておっぱいを飲めばいいんだ!アニキも鳴いていた。だけど、おいらよりずっと落ち着いて見えた。「逃げ出せるすき間はないか?」「どこかに身を隠すところはないか?」と、よ〜く周りを見渡しながら鳴いていた。おいらはアニキについていくばかり。

以来、おいらたちはアイツらと暮らすはめになった。アイツは「ママがやってあげるね」とか「ママのところにおいで」と言うけれど、アイツがママなわけはない。どうやって二本足が四つ足のママになれるんだ!でも、本人はすっかりその気で、ヘタくそで気が利かないながらも役に立とうとしてるので、様子を見ることにした。

アイツには一回り大きい仲間がいて、おいらは"連れ合い"と呼んでいる。いつも一緒にいるからだ。二人はおいらたちのことを気軽に「ネコ、ネコ」と言うけれど、自分たちがなんなのかは絶対に言わなかった。二本足のことを「ニンゲン」と呼ぶことを、ずい分後で知ったけど、なんだか聞きなれない言葉で、おいらにとっては今でも二本足は二本足なんだ。(つづく)
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