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Vol.0011■今度はおいらが・・・ 2004年11月5日
おいらはキャビネットの中でじっとしていた。アイツらがいなくなったのはわかってたけど、突然戻ってくるかもしれない。なにをしでかすのか、まったく読めない連中なので用心したに越したことはない。嗅いだこともないにおいに囲まれながら、ただただ心細く、ひもじかった。「ずっとここにいなくちゃいけないんだろうか?」と思うと、とてつもなく不安だった。

「ニャー」低い声がしてアニキが近くまで来た。もう出てもよさそうだ。ほんのりと明るいすき間を頭で押し広げるようにすると、うまいこと出られた。おいらたちは無事を確認し合い、まだそのころはかなりヘタだったものの、お互いの耳のあたりを舐めあった。アニキはあれからずっと濡れた毛を舐め続けてたんだろう。まだ濡れてはいたけど、いつもの見慣れた大きさに戻っていた。

2匹だけになってみると、恐ろしくお腹が減っていた。ヘンなおっぱいを吸いかけていた新聞を思い出し、すぐにそっちへ行ってみた。ところが、どうしたことだろう!新聞は別のものに取り替えられてるじゃないか!小ぶりのボールに新しいヘンなおっぱい――ミルクも注がれている。一緒に生臭いゴハンも置いてある。この腹ペコの時に、あの新聞がなくなるとは!アニキはさっきボールをひっくり返したばかりで、さすがに慎重だ。濡れた毛がどうしても気になるらしく、また毛づくろいを始めた。

でも、おいらはもう腹ペコでがまんできない。忍び足でボールに近づき様子をうかがう。動くものではなさそうなので、今度は前足で軽くちょんちょんと触ってみる。さっきのボールより浅く、低く、中がよく見えた。しかし、どうやって飲むんだ?ヘンだと思っていたにおいも、だんだんおいしそうに思えてきた。ママがいない以上、なんとかしなくちゃ。

思い切ってボールのはじに前足をかけた。今度はひっくり返らなかった。アニキも顔を上げてこっちを見ている。「よし!」ともう一方の前足もふちにかけ、ミルクが目の前になった瞬間、また妙な音がしてボールがひっくり返り、白いミルクが飛び散った。ボールが転がる音、頭からミルクをかぶったおいら・・・。「アイツらが戻ってくる!」 おいらたちはまたまた一目散に逃げ出した。(つづく)
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