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Vol.0013■おいらたちの会話 2004年11月13日
「おいらとアニキは話をしてるのか?」って聞かれたら、答えは「ノー」だ。姿が見えない時に呼んだり、ケンカの時に声をあげたりはするけど、二本足が思うような"会話"じゃない。だから、いつも静かなもんだ。どうしてアイツやチビどもが、ああもしゃべり続け、うるさいのか、おいらにはさっぱりわからない。

でも、アニキがなにを考えてるのかはだいたいわかる。アニキもおいらが考えてることがわかってる。会話じゃないと話ができない二本足は、おいらたちのことを「いつも一緒にいて、たいしたこともしてないんだから、自然に言いたいことがわかるんだろう」と思ってるらしい。でも、そうじゃない。考えてることがわかるのはアニキだけじゃない。その気になれば、遠くにいるママやアネキたちの考えてることもわかるし、こっちの想いも伝えられるんだ。

ソファーの下で腹を空かしながら寝入ってしまったおいらは夢を見た。ママがいる。アニキがいる。見分けがつかないくらいそっくりな2匹のアネキたちがいる。緑の芝が続いて、守衛のデカい靴も見える。暗くて涼しくて出かけるには一番いい時間だ。暗くなると二本足も来なくなって、守衛が数人残るだけだ。おいらもみんなと一緒に、苦労しながら芝の上を歩いてる。つるつるの床よりずっといい。ママがいて、外にいられる。

その時、急にママがおいらに伝えてきた。
「いつでも遊びにおいで。」
「ここには戻れないの?」
「多分ね。」

それだけだった。おいらは目を覚まし、アニキも目を覚ました。お互いちょっとだけ舐めあって、また眠った。あれは厳密に言うと夢じゃない。おいらとアニキは本当にママのところまで行ってきたんだ。わかりにくければ、身体はここに残して気持ちだけ行ってきたとでも言えばいいか?

おいらたちはこういうことができる。だから言葉がいらないんだ。二本足はいちいち思っていることを言葉という音にして、耳から聞かないと理解できないらしい。でも、おいらたちは伝えたいことを直接頭の中に伝えられるから、口でしゃべることも耳で聞く必要もない。だから、遠くにいるアネキの1匹がそのあとちょっとして、この世からいなくなったのも、おいらたちはちゃんと知っていた。(つづく)
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