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Vol.0055■おいらが話せる訳−迷った指先 2005年4月8日
あいつは人形のようになったおいらのからだに、水やドロドロのご飯を流し込んだ。苦しくて吐く時だけはなんとなく気持ちが戻ってたけど、からだの中は焼けつくように熱くて痛かった。薬がおいらのからだを溶かしてた。いくら吐いても薬は出てこない。おいらは溶けていくからだと、勝手に遠くへ行っちまう気持ちの間で、どこにもいる場所がなかった。いつものように気持ちだけで動き回ることも、交信もできない。見ることも、嗅ぐことも、聞くこともできない。二本足以下だった。でも、歩けた。

(←こうやってもらってた・・・らしい)

おいらは生きていた。というか、からだが死ななかった。からだが残ってるので、どっかに行ってた気持ちが時々戻ってくる。そうすると恐ろしい苦しみが、必ず待ってた。熱い、痛い。あまりにも苦しくて、また気持ちがどっかに行っちまいそうだった。あいつも必ず待ってた。おいらを抱いて何かを口に入れようとしてる時も、おいらのベッドを作ってる時もあった。泣いてる時も、子ども達と笑ってる時も、パソコンの前でカタカタやってる時も、他の部屋で寝てる時もあった。とにかく、必ず家にいた。

おいらの足には針が刺さっててその先には長いひもがついてた。それが水の入ったバッグにつながってる。動けば邪魔だろうけど、ほとんど動かないおいらにはそんなに邪魔でもなかった。ただ針がすごく痛い時があって、そんな時は自分で取っちまった。おいらが水を飲まないので針から入れてたんだろう。二本足の考えそうなことだ。でも口から入ってこないとからだに入った気がしなくて、おしっこがいっぱい出て終わりだった。

おいらはまた獣医のドリスのところに連れて行かれた。あいつとドリスがおいらを真ん中に置いて、薬を飲ませる飲ませないと話してる。いろんな四つ足の声がして、さすがにおいらの気持ちも戻ってた。「イヌがいるな」と思ったのを覚えてる。ドリスが飲ませようと言ってるらしい。あいつは嫌みたいだったけど、ちょっとは考えてるらしい。2人はおいらをなでている。あいつもドリスも指先が迷ってた。おいらは「これ以上飲んだら、からだも死ぬな」と思った。(つづく)


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