直線上に配置
Vol.0105■どこからどこへ U 2005年10月4日
きれいで静かで、花がたくさん咲いてる川のふちをとことこ歩いていくおいら。寒くも暑くもない。天気もいい。二本足も四つ足もいない。トリの声だけはよく聞こえるけど、姿は見えない。

おいらはどこに行くのかわかっているように、どんどん歩いていった。でも、ほんとうはどこに行くのか思い出せなかった。他にもなにかを思い出そうとしてたけど、なにを思い出そうとしてるのかが思い出せない。

そのうち、川に橋が架かってるところに出た。おいらは初めて足を止めた。川の向こう側も、こちら側と同じようにたくさん花が咲いている。川はそんなに広くないのに、橋はとても長く見えた。

「遠いんだか近いんだかよくわかんないな」と思いながら、おいらは渡ってみたくなった。四つ足は水が大嫌いだけど、自分が濡れないんだったら上から水を見るのも悪くない気がしてきた。

からだの向きを変えて橋の正面に立ったとき、ふと、
「あれ、アニキがいない。」
と思い出した。生まれたときからずっと一緒だったアニキがいない。別にそれが寂しいわけでも、痛いわけでもないんだけど、自分の足が一本足りないのに気づいたような気分だ。              (アニキはどこだ?→)

「アイツらもいない。」 
アニキを思い出したことで、アイツらのことまで思い出した。そうだ、おいらはいつも誰かと一緒にいたんだ。でも、今は1匹で橋を渡ろうとしてる。どこに向かってるんだか・・・。

「ピッピー」 
そのとき、ずっと遠い高いところからかすかな声がした。その声を聞いて、自分がピッピと呼ばれてることも思い出した。そうだ、おいらはシロ猫のピッピ。みんなそう呼んでる。声がした気がする遠い高いところを見上げても、雲ひとつない真っ青な空が広がっているばかり。

「みんな、どこにいるんだ?」(つづく)
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